平成17年度公開情報中間報告 事業中間報告書

2007年度事業活動中間報告

【会長挨拶】
 平成20年の新年を迎えるに当り、当協会の活動を皆様にご紹介すると共にご挨拶申し
上げます。
 私は、平成19年6月に会長に就任以来、これまで継続して行ってきた事業分野にとど
まらず、協会の情報と技術を結集し、人類が抱える様々な問題に幅広く取り組んでいく
ことにより、真の公益法人として飛躍する方針を打ち出しました。この方針に基づき新
たなテーマ探しと事業化を行った結果、今年度に入りその成果とも言える事業として、
下記にご紹介する「TOTO水環境基金」助成による「ツオンティン地区(ベトナム)での
住民による安全な水づくり活動」と、「海の森づくり」共同事業を行うこととなりまし
た。共に環境問題を扱うものですが、一つは陸域でもう一つは海域の水質改善を行うも
のであります。しかし、共に水をきれいにするだけでなくその周辺環境の改善を目指
し、広くは地域から地球環境にまで及ぶスケールに、また人間以外の生物の生育場活性
にもなればと思っております。
 平成20年度に於いては、もっと広く人工衛星のリモートセンシング技術を利用した地
球環境等の調査・研究、緊急災害時の水の確保やインフラ整備にも繋がる事業、サンゴ
礁の保護、育成も新たに取り組もうと考えております。また、2008年夏に北海道で開催
される洞爺湖サミットでも中心議題となるであろう地球温暖化、環境問題に対しても、
当協会が貢献できる分野が多々あり、協会内の企画、運営委員会にて起案し、会員なら
びに関係機関・団体との連携により事業化を考えていきたいと存じます。
 これまで当協会の活動は会員の皆様はじめ多くの方々に役立つものが少なく、活動自
体も限定されたものとなっておりました。年も改まり、今後は「自然と人類の共存」を
目指し活動の場を広げて参りたいと存じます。皆様のご理解、ご協力と暖かいご支援を
頂ければ幸いに存じます。よろしくお願い申し上げます。
                        社団法人国際海洋科学技術協会
                        会  長  立 光 武 彦

【事業中間報告】
①助成団体: 河川環境管理財団
 事業名: 河口・海岸域における生物生息環境の総合化研究(継続事業・第2年度)
 事業費総額: 3,800千円
 事業概要: 河口・海岸域は生物生息環境として最も重要な場所であり、また産業、
   市民活動の活発な場でもある。この公共的地域の防災、社会活動を配慮した生物
   環境変動を総合的に検討し、環境再生、公共利用に役立てる方策を考え、方向を
   示すこととする。
 事業経過: 本年も中村充(福井県立大学名誉教授)氏が座長を務め、国内の河川、
   港湾、沿岸域の環境浄化手法の検討を実施し、9月28日に第1回の委員会を開催し
   た。今年度はこれまで個々の生物、場(東京湾、大阪湾、伊勢・三河湾、陸奥 
   湾、瀬戸内海、有明海)等多くの箇所の研究・討議を行ってきたが、昨年度に引
   き続き新しい評価手法としてPCM(Project Cycle Management)法等を利用し、
   河口・海岸域、湾、外洋までの全体を総合的に回復、再開発させるという、これ
   まで研究されていない手法で検討を進める予定である。
   12月18日に第2回委員会を開催し、水産総合研究センターの児玉真史氏に「流域
   の開発および河川負荷変動が漁場環境に及ぼす影響」をテーマにプレゼンテーシ
   ョンを実施して頂いた。河川、陸域から沿岸域への影響についての検討を行っ 
   た。
   2008年2月5日には第3回委員会を開催し、農村工学研究所の白谷栄作氏に「農業
   系排水の循環利用による負荷削減」をテーマにプレゼンテーションを実施して頂
   いた。陸域の農業地域から、河川を伝い沿岸域への排水の影響についての検討を
   行った。

②助成団体: 環境再生保全機構
 事業名: カンボジアの都市、沿岸域の水汚染回復事業
 事業費総額: 3,500千円
 事業概要: これまでカンボジアでは無秩序な開発が続けられ、海岸域の自然資源や
   環境が破壊され続けてきた。これからは十分計画された開発を行う事により、沿
   岸域の人、環境、産業活動によい影響を与えようとしている。現状では陸域から
   無秩序な有害・汚染物質の投棄、流出が行われ、複数の汚染物質が混在する状況
   である。当協会は現地からの報告により現状を調査し、回復への道筋、方策の検
   討、浄化試験、汚染防止対策の提案を行いたいと考える。これにより都市生活 
   者、生物生態系の回復を行い、ひいては東南アジア各国で同様に起こっている都
   市汚染の回復、生活水の確保を目指すものである。
 事業経過: 7月19日より26日まで、堀田健治教授、協会会員のジェックアクアスタ
   ッフ社の小松達利氏、高谷汚泥処理センター社の曽我部雅美氏と共に事務局の猪
   口が現地カンボジアを訪問し、調査、取材を行った。カンボジア国内ではシアヌ
   ークビル市の各所において水質調査を実施した。また、シアヌークビル市環境 
   局、水処理場、エビ養殖場、海岸域、港湾等の見学と副市長、関係者との面談に
   よる状況取材を行った。同国首都プノンペンでは環境副大臣と面談し、国内の状
   況を伺う一方、国としても我々の水汚染、環境回復事業に協力したいとの意見を
   頂いた。続く2008年2月2日より8日まで現地を再訪問し、シアヌークビル市のゴ
   ミ処分場、水源地、沿岸域等の井戸など試験予定地を見学し、水質浄化模擬試験
   等を実施した。今後、規模を拡大した試験を実施を検討中である。
                                      
      
      民家の水貯蔵システム      シアヌークビル市の汚水処理場
                                      
      
    シアヌークビル市水質環境研究所    カンボジア環境副大臣と面談

     
       山間部の村の井戸       シアヌークビル市のゴミ処分場

③日本海洋工学会事務局活動
 事業名: 第36回海洋工学パネル開催(7月27日)
 テーマ: 海洋の新産業創造に向けて-海洋資源・エネルギー・微生物の利用-
 事業概要: 海洋工学と関連の深い9つの学協会(海洋音響学会、海洋調査技術学 
   会、資源・素材学会、石油技術協会、日本沿岸域学会、日本建築学会、日本水産
   工学会、日本船舶海洋工学会)が協力して、学協会を会員とする連合体学会とし
   ての体制を明確にし、海洋工学分野での情報交換、学際的課題の発掘、共同研究
   の実現につとめ、海洋工学パネルを開催している。
  今回のパネルでは、前半で、日本近海に存在する有望な海洋資源としてメタンハ
   イドレートと熱水鉱床を取り上げ、その資源ポテンシャルと調査研究の現状を紹
   介した。後半では、大水深海洋掘削リグの技術動向、海洋温度差発電ビジネス、
   海底下微生物の調査研究の現状が紹介された。
 次回講演: 日本船舶海洋工学会との共催による海洋工学シンポジウムを3月18~19
   日に、日本大学理工学部駿河台校舎において開催する。当協会はこのシンポジウ
   ムの開催に協力する。
   尚、第37回海洋工学パネルは2008年7月に開催予定であり、当協会は事務局とし
   て本パネル開催にむけて協力する。

【2007年度新規事業】
①助成団体: TOTO水環境基金
 事業名: ツオンティン地区での住民による安全な水づくり活動
 事業費総額: 3,531千円
 事業概要: 昨年、ベトナムにおいて、河川及び井戸水にまでも水質汚染(砒素等重
   金属類による汚染)が進み、日々の生活水や飲料水の確保に支障をきたす状況の
   説明を受けた。これらは弱者、とりわけ幼児を含む子供への影響が深刻とのこと
   で、水質浄化とこれによる安全な水供給が急がれる状況にある。
   Hatay地域、Hanam地域はベトナムの首都ハノイの端に位置する地域で、都市化が
   著しいハノイに野菜等の食料や建設資材を生産する地域のひとつである。また、
   子供は重要な労働力で、家の経済を支える担い手でもある。本事業では、地域住
   民の健康保持支援のため、河川水、井戸水の水質検査を実施しながら、小規模で
   あるが最大1日50トンの水を供給できるモデル装置を地域住民と協力して設置す
   ることを目的としている。
 事業経過: 10月28日より11月5日まで、本事業の実施計画者として日本大学の堀田
   健治教授と、協会会員のジェックアクアスタッフ社の小松達利氏、高谷汚泥処理
   センター社の曽我部雅美氏と共に現地ハティ県を訪問し調査、取材を行っていた
   だいた。訪問者はベトナムユニセフ、ハティ県水供給公社等。現地の水質調査、
   水供給インフラの見学、凝集剤使用による水浄化の状況等について調査し、関係
   者と協議を行った。
   今後は小規模ながらも水供給モデル装置を地域住民と協力して設置し、清浄な水
   の配水を図ると共に、技術移転を考えている。
                                      
        
    ツオンティン地区水道局と溜池       地下水汲み上げ貯水槽

②事業名: 海の森づくり事業
 事業概要: NPO「海の森づくり推進協会」と共同で、海藻養殖事業による周辺生物
   生態系及び生息場の構築、水中のCO2の吸収、水環境改善と各種生物の蝟集、海
   藻の水揚げによる収益確保を目指す。
   本年度はNPO「海の森づくり推進協会」および当協会のもつ技術やノウハウを基
   に、かつ自治体・地元住民・企業の参加・協力者を募り、環境汚染の改善が難し
   い東京湾の東側に位置する京葉臨海部を中心に、コンブの増殖を東京湾で食料や
   各種資源として利用するためのコンブが育成することを実証する。併せて生物生
   息環境改善、海水浄化等を立証し、環境学習活動、食育と食文化の向上に寄与す
   ることを目的とする。
   12月17日には市原市の海づり施設では潜水調査及び施肥材を投入し、20日には金
   田漁協でコンブ増殖事業としてコンブ芽株を付けたロープを沖合に設置、22日に
   は千倉でも同様のコンブ芽株を付けたロープを港湾内の生け簀に設置した。
                                      
       
   市原市の海づり施設・施肥材投下海域     施肥材(2007.12.17)
   (2007.12.17)
                                      
        
    施肥材投下の様子(2007.12.17)   ロープへのコンブ株の取り付け作業
     (2007.12.20)
                                      
       
    金田沖のコンブ株ロープ設置水域   金田での事業スタッフ(2007.12.20)
    (2007.12.20)
                                      
       
    千倉での準備作業(2007.12.22)   千倉漁港の生け簀への取り付け作業
                      (2007.12.22)

【2008年度助成申請事業】
新規申請案件
①助成要望団体: 日本財団
 申請事業名: リモートセンシングを用いた南沙諸島の海洋調査研究
 事業計画予算総額: 6,398千円
 事業概要: 南シナ海、南沙諸島海域はシーレーンとしてわが国の船舶の航路となっ
   ている。また本海域は水産資源における産卵地・生息域とされ、わが国はもとよ
   り東アジアの海にとっても重要な場所の一つとなっている。一方、南沙諸島は現
   在6カ国が領有権を主張しているが、情報はきわめて少なく、また開示されてい
   ない状況で、海の秘境、世界の火薬庫とも呼ばれている。これまでの調査から当
   海域周辺は生物の宝庫であり、学術的にきわめて価値の高い場所と指摘されてき
   た。本研究ではリモートセンシング技術を用い、南沙諸島の当海域に係わる大 
   学、研究機関の研究者により、海図と島の位置検証をはじめ安全航行に必要な資
   料、水産資源その他生物環境保護等に係わる海洋科学情報を収集し、この海域の
   安全に資する資料を得ることを目的とする。

②助成要望団体: 日本自転車振興会
 申請事業名: 平成20年度災害地及び発展途上地域で使用する水浄化機器の製作補助
        事業
 事業計画予算総額: 13,587千円
  事業概要: 国内外の被災地、発展途上国、地方村落では、ライフラインの損壊、イ
   ンフラの未整備、有害重金属の漏出等により飲料水、生活水の不足やこれに代わ
   るもののない状態が続き、健康被害、農水産物被害、環境被害を起こしている。
   これらを早急に改善するため、水浄化システム、機器の設計、製作を行うことに
   より機械工業の事業展開及び発展に貢献し、もって機械工業の振興に寄与する。

③助成要望団体: 日本経団連自然保護協議会
 申請事業名: 汚泥流出防止を踏まえたフコック島サンゴ礁回復事業
 事業計画予算総額: 3,600千円
 事業概要: サンゴはCO2固定に大きな役割を果たしているが、河川からの土砂、海
   水の温暖化により白化し減少している。ベトナムのニャチャン国立海洋研究所、
   ニャチャン海洋科学技術開発研究所等と共同で侵食海岸における漂砂防止養浜プ
   ログラムを開発し、併せて新しい滋養剤を使い、サンゴの生育を促す増殖試験を
   行い、保護と回復を図りながら自然保護における生物多様性に寄与することを目
   的とする。2008年は国際サンゴ礁年とのことで是非この事業の助成を頂き、成功
   させたい。

継続事業助成申請案件
①河川環境管理財団
 事業名: 河口・海岸域における生物生息環境の総合化研究(第3年度)
 助成申請額: 3,500千円
 事業概要: 河口・海岸域は生物生息環境として最も重要な場所であり、産業、市民
   活動の活発な場でもある。今年度は河川環境を総合的に考慮するため、陸域の水
   資源から公共的地域でもある河川・海岸域のあり方、防災、産業、市民活動の重
   要性を知り、循環型社会、グローバル化、地域化に役立てる方策を考え、その方
   向を示す事を目標とする。

②環境再生保全機構
 事業名: カンボジアの都市、沿岸域の水汚染回復事業(第2年度)
 助成金交付要望額: 3,900千円
 事業概要: これまでのカンボジアでは無秩序な開発が続けられ、海岸域の自然資源
   や環境が破壊され続けてきた。昨年度の調査では、陸域からの無秩序な有害・汚
   染物質の投棄、排出が行われ、複数の汚染物質が混在、放置される状況が分かっ
   た。現地からの報告も併せ今年度は回復への道筋、方策の検討、浄化試験、汚染
   防止対策の提案を行いたいと考える。これにより都市生活者、生物生態系の回復
   を行い、ひいては東南アジア各国で同様に起こっている都市汚染の回復、生活水
   の確保を目指すものである。これらにより水をめぐる人、生物、自然環境等に対
   する環境改善、生活や生態系の回復・向上を目標とする。