機関誌 JIMSTEF NewsVol 8, No.1-2 事業紹介

事 業 紹 介

1.平成17年度環境再生保全機構地球環境基金助成事業
フィリピン・セブ島の汚染海域における生物生息環境回復事業

事業の目的
 フィリピンにはセブ島をはじめ美しい海岸域の箇所が多数あることはよく知られているが、近
年養殖池の堆積汚泥を汚染源とする養殖場の自家汚染が進行し、海の環境悪化が広まって
いる。これが原因で海藻やサンゴが減少し、ひいてはここに生息する生物が激減し、人々の生
活にも影響を及ぼしている。本事業では、当協会に地元の関係者から環境回復や水質改善
の要望を受けたことから、昨年度から自家汚染に対しコストをかけずに堆積物を除去する技
術を用いて水質改善を図ると共に、失った海藻やサンゴを回復させ、早急に生物生息環境を
回復させることを目的としている。また、生活排水による水質汚染についても浄化活動を行うこ
とを目的とする事業を始めた。
  水質をはじめ沿岸域の生物・生態系を守るためには、沿岸はもとより陸域の環境整備から
始めることが必須である。当協会では、これまで会員や学術経験者の持つ技術により、有機
汚染の他、重金属も安価に除去し底質を改善する技術、更に生物の生育に必須な微量元素
を含有させた材料により海藻やサンゴを増やす技術を用い、環境改善を国内外の各地で行っ
てきた。昨年度は、都市部と沿岸域養殖池の浄化の2つの汚染防止と生物および生態系回復
を行う調査を行った。

これまでの活動状況
 昨年度の調査結果を基に本年度事業を行うに当たり、今年度もフィリピンのカウンターパート
で水産資源の管理、調査研究の第一人者であるDr.Guerrero氏と国内各地域の研究者等の意
見から、セブ島のマクタン(Mactan)、カルカル(Carcar)地区の海中林域、エビ養殖場と近隣域
及びマニラ北部のブラカン(Bulacan)における水質汚染状況の調査を行った。
 自家汚染した堆積物の底質改善に当たっては、海中、河川、湖沼の堆積物を直接固定無害
化する方法、あるいはポンプ吸引し現地で処理を行うことを検討した(処理された汚泥は副次
効果として現地で利用(そのまま肥料化できる技術を使用))。一方、海域では生物生息場とし
ての海藻林(Caulerpa Lentillifera(イワズタ属)を中心に)の造成、サンゴ造成(褐虫藻を活性
化させることによってサンゴの成育を早める)として微量元素を用いた施肥材を利用し、生物
生息環境を回復させることを検討した。
 浄化効果検証のための水質改変、生物モニタリング、海中林・サンゴ海域では施肥技術に
よる海藻の生育と蝟集生物調査を行い、分析・評価する。また調査の際は、現地事業者の力
を借りて状況調査を行い、技術移転のための手法等の指導を行うこととする。これらにより2年
度目の今年は、昨年度の調査結果を基に生物生息環境の回復と海へ流出する生活水の浄
化、環境影響調査を行うこととする。

今後の活動
 今後、現地渡航し、Dr.Guerrero、堀田健治教授(日本大学)等と共に調査及び環境修復手
法の一つとして考える海域への施肥材散布を行い、経過観察を行う予定である。
 試験地での底質浄化と水質環境の改善、生活用水の提供、並びに海中林の回復は生物の
多様性が期待でき、持続可能な資源利用にもつながる。また、現地住民、研究者と協力して行
うことや、水環境に関する啓蒙活動も併せて行うことにより、環境と生物の関係の理解、資源
の保全は地域の活性化にも寄与すると考える。
 これからの活動では、施肥材投入による試験の経過を観察し、環境回復に効果が認められ
れば将来的には技術移転を行うことを考えている。

事業紹介イベントへの参加
 本事業の助成者である独立行政法人環境再生保全機構地球環境基金が主催する、地球環
境市民大学校、環境NGOと市民の集いPart-2「Let'sエコボランティア&エコ就職」のイベントが
11月23日に早稲田大学を会場に開催され、当協会も助成事業についての紹介、報告を行っ
た。
 会場には200名を越える聴衆が集まり、本年度の地球環境基金を受ける32団体の活動内容
が紹介され、エコボランティア活動の意義、社会貢献、就職希望者への意見等が討論形式で
交わされた。また、討論会の後の個別面談では、当協会活動について面談を求めてきた学生
が複数あり、事業内容の詳細と今後を説明した。


2.平成17年度公益信託日本経団連自然保護基金助成事業
タイ国におけるスズ等の採掘がもたらしたヒ素その他重金属汚染による河口・海岸域ま
での環境修復と改善活動

事業の目的
 タイ、マレーシアに及ぶマレー半島では、スズ鉱石等の鉱物資源の採掘が長年に渡って行わ
れている。スズ鉱石採掘を行ってきた山間部には同時にヒ素などの鉱物も埋蔵され、地域住
民に重金属による鉱毒被害を来たす水汚染が問題となっていた。これまでの事業対象地域の
タイ・ロンピブン郡においては、河川、貯水池、地下水に重金属の含まれる水が流入し、住民
の健康被害も出ていた。この河川、沿岸域に至る生態系及びその周辺住民の生活に危機的
影響があるとの報告があった。早急な改善が望まれ過去2年間の調査と水質改善事業によ
り、一部地域の環境修復が進むようになってきた。
  本年度は、ロンピブン郡以外の地域で同様の状況がないか調査し、併せて昨年度、同様の
問題を抱えているミャンマーでの状況調査により広域の環境修復を行うこととする。

これまでの活動状況
 15?16年度の活動によりロンピブン郡で得られた環境状況調査結果と水質改善による環境
修復効果を基に、今年度はタイ国内の他の地域で同様の被害地域に対しても、環境修復の場
を広げたいと考える。
 現地カウンターパートのタイ・チュラロンコン大学のDr.Supichai教授に、タイ国内でロンピブン
のような環境影響被害を受けている地域がないか16年度中に調査を依頼し、河川、海岸域を
含めた生態系への影響調査を行う。その調査結果を踏まえてそれぞれの箇所での改善点及
び現地の生態系回復のための事業を行う。ひいては当地の生活環境の向上、河川により繋
がる沿岸域の生物生産、周辺住民の生活、漁業活動に好影響を与えられればと考える。

今後の活動
 今後の活動については以下の行程を考え、現地での環境回復の道筋をつけることを目標と
し、12月および1月に予定されている渡航時に実施する。
・Dr.Supichai氏との打合せにより、対象地域の水源地、河川、海岸域の環境及び生物調査の
 実施。
・調査結果から環境回復手法の検討を当協会会員、関係研究団体及び現地カウンターパー
 トと行う。その後、水質浄化システムの紹介と実施による環境修復、改善と今後の進め方  
 を協議する。
・現地研究者に、試験後の状況のモニタリングを依頼し、結果報告を行うとともに、現地住民
 への環境保護の理解と協力を求める。
・生態系環境回復に向けて我々の手法やその他技術の技術移転について紹介し、最適と思
 える環境修復の検討を行う。

活動により見込める具体的な成果
 これまでの2年間の調査研究活動により、現地内陸部の水源地から河川、海岸域につなが
る現状を知ることができた。また当協会会員の方々の技術を利用することにより、土壌や井戸
水、湖水に含まれるスズ、ヒ素他重金属から山間部の保護、浄化、河川及び海岸沿岸域の環
境汚染修復と改善ができる成果を得た。今後はこれら成果を元に他のタイ国内への環境汚染
修復事業の拡大により、河川流域・沿岸域の生物生産、住民生活、漁業活動に好影響を与え
られると考える。 タイ、ナコン・シー・タマラトの養殖場群

助成事業経過報告会の報告
 これまでの助成事業の報告を日本経団連自然保護協議会に対し行った。以下、その内容を
報告する。
日時  平成17年9月16日(水) 16:30?19:30
会場  日本経団連会館会議室
出席者 日本経団連自然保護協議会関係者5名
    社団法人国際海洋科学技術協会2名(小長俊二常務理事、猪口茂樹事務局長)
説明概要
 平成15年度より開始したタイにおけるヒ素等重金属汚染地域の河口・海岸域までの環境回
復事業についてその経過をスライドを用い報告し、日本経団連自然保護協議会関係者から事
業の経過や今後に付いての質問、意見を頂いた。
 ヒ素等重金属汚染の原因、汚染地域の調査・状況、環境修復の手法と今後の継続的モニタ
リングの必要性等が話題となり、現地で続けられる手法の開発、摘要も検討課題ではないか
との指摘を頂いた。今後の調査、現地との協力を継続することで、環境修復、改善に向けて活
動を行うこととした。


3.平成17年度河川環境管理財団河川整備基金助成事業
河口・海岸域における生物生息場の機能と環境影響に関する調査・研究

事業の目的
 これまで河口域における干潟・浅場・藻場の環境修復、浄化機能は、人間が配慮しようとして
もその機能が感覚的、情緒的に取り上げられるに留まり、定量的、具体的内容にまで到らな
かった。干潟・浅場・藻場が持つ環境作用の理解は未だ十分ではなく、本事業では干潟・浅
場・藻場の持つ環境への影響力や生物生息場としての機能を陸域や河川と比較および相互
作用を検討し、環境に対し効果的な干潟・浅場・藻場の改善・修復手法を定量的に検証するこ
とを目的とする。

調査・試験・研究の概要
 17年度は15、16年度に引き続き、環境指標として用いるアマモ場を調査実験場として物質循
環機能を定量的に明らかにしたい。そしてより効果的で自然への回帰を目指す干潟、藻場造
成による地域の改善を提言することとしたい。

今年度の事業活動について
 今年度も昨年一昨年同様、委員会内外の研究者によるアマモ場の増殖、回復を研究する研
究者からの報告を受け、日本国内の環境修復のあり方を見ていくこととする。その中で、
干潟・浅場・藻場の環境修復、浄化機能を定量的な形で示すことにより、それぞれの地域での
環境修復の計画設計を容易に行うことを可能にし、効率的な環境回復が目指せると考える。
 また、国内の主要な河口・海湾の事例を調査することで典型事例を定量化し、より環境回復
への手順を明確にすることができる。このことから研究項目の推進に役立ちかつ地域住民の
期待に答えることができる。併せて本研究会ではこれまでの干潟・浅場・藻場の環境修復、浄
化事業の研究は生態系モデルを中心とし、多くのパラメータ(100以上)を現地調査で決定する
方法がとられてきた。本調査研究では負荷原単位に対応して、浄化原単位の求め方に力点を
置く新しい手法を開発することを一つの目標とする。
 このため次の方策を行うことが重要と思われる。河川と直結する河口・海岸域の環境修復の
ために河川がどうあるべきかモデルを作成し、予算を最大限に活用し、河川、干潟・浅場と連
なる地域の環境修復・浄化を浄化原単位法の立場から再整理、再調査を効率的に検討、実
施する。多くの研究者が長年試行錯誤をくり返してきた河口・海岸域の環境修復、浄化事業の
定量化に糸口をつけることにより、国内外の事業が大きく進むことになる。河川、海岸域の環
境に関する研究者を委員、研究発表者にしてその意見を採り入れ協議し、その人達を通じる
ことで河川管理者、現地関係者等との連絡を密にする。
 これらの調査研究活動により、新たな干潟、藻場回復による生物生息場の機能と環境影響
の回復を目指すこととしたい。


4.人工ゼオライト研究会
4?1.研究会の目的
 本研究会は、石炭灰のリサイクル材である人工ゼオライトを、現地の土壌や汚泥、及び工事
等で発生する土等へ施用し、地域の環境改善、農水産物の生産等に貢献することを目的とす
る。

4?2.人工ゼオライトの具体的な適用対象
・原位置での底質改善
 ・覆砂材を兼ねた藻場等への適用(実績:アマモ場の造成)
・浚渫土の土壌改良
 ・緑地等への客土材適用
・上下水汚泥の土壌改良
 ・緑地等への客土材適用(実績:浄水場汚泥の有情緑化への利用)
・発生不良土の土壌改良
  ・緑地等への客土材適用(ダム濁水処理汚泥ケーキの植生用土壌化)

4?3.研究会の開催概要
・第1回研究会
 平成17年7月15日に第1回研究会を開催し、人工ゼオライトの紹介と活用事例報告を行っ
た。参加者からは人工ゼオライトを使用する対象となる地域に関すること、経過、今後の改良
方策等について質疑、討論を行った。
・第2回研究会
 平成17年11月25日に第2回研究会を開催し、事例紹介及び第3回伊勢・志摩海洋国際会議
での講演の報告を行った。