平成16年度公開情報 事業報告書

平成16年度事業報告

1.概要
 16年度は事業計画に沿った活動を実施し、会員並びに国内外関係者の期待に概ね応えうる
成果を得た。国際関連活動としては16年5?6月にかけて「海洋科学技術に関する太平洋会議
(PACON2004)国際会議」がアメリカ・ホノルルで開催され、これに参加する参加者を募った。次
いで国際会議として9月1?2日と「2004新潟海洋国際会議」を新潟県、新潟市及び新潟日報社
との共催で開催した。民間助成活動では、「河口・海岸域における生物生息場の機能と環境影
響に関する調査研究」、「マレー半島におけるスズ鉱石採掘がもたらしたヒ素その他重金属汚
染による河口・海岸域までの環境修復と改善活動」、「日本海域に生息するイガイに関する海
洋環境研究」、「フィリピン・セブ島の汚染海域における生物生息環境回復事業」を行い、相応
の成果をあげた。会員には関連情報を提供した。
 平成17年3月25日時点での会員構成は、正会員43団体、賛助会員の個人会員9名である。
 今期は理事会を5回、通常総会を2回、運営委員会を2回開催し、運営全般について審議を
行った。

2.自主調査研究事業
 (1)「 21世紀の海辺づくり調査研究」をテーマとし、協会の鬼頭理事を中心に人工ゼオライトを
  利用した沿岸海域の開発と自然環境の回復を目指す各種調査研究活動を行った。今年度
  は人工ゼオライトの新潟県の農地への利用による土壌浄化と、観賞用魚類等の水槽内水
  質浄化機能確認試験を行った。同じく、中国での石炭灰の有効利用を検討する調査・討議
  を行うため、現地中国・山東省を訪問し関係者と協議した。

3.助成・依託事業
 (1) 環境再生保全機構・地球環境基金による「フィリピン・セブ島の汚染海域における生物生
  息環境回復事業」を行った。本事業は16年度から始まる継続事業と考えている。フィリピ 
  ン・セブ島周辺海域は美しいことで日本でもよく知られているが、近年この島の沿岸部の環
  境悪化が広まっている。そこで広範囲の堆積物を除去し、低コストで水質改善図ることで、
  海藻、サンゴ類を復活させ、生物生息環境を回復させることを目的とした。併せて、マニラ
  近郊の都市河川、海岸域の重金属汚染が激しく、これらの水の清浄化を現地関係者より 
  依頼されたため、現地調査を行い、かなりの汚染を観測した。今後はこの水の浄化手法に
  ついても検討することとした。
  (2) 公益信託経団連自然保護基金による、東南アジアにおける環境保全事業として「マレー 
  半島におけるスズ鉱石採掘がもたらしたヒ素その他重金属汚染による河口・海岸域までの
  環境修復と改善活動」を行った。本事業は2年度目の継続事業である。事業内容は、タイ・
  マレー半島奥地でのスズ鉱石採掘を原因とした重金属汚染された水の流出から、内陸部 
  ひいては河川、海岸域生態系への影響が報告されている。この環境状況の調査と環境回
  復を目的とし、水浄化事業と併せて実施方法の指導、技術移転を行っている。2004年7月 
  と12月に現地に渡航し、現状調査と水浄化による環境回復活動を行った。この事業は協会
  と協力関係を持つ企業の協力を得て、平成17年度も継続して行うことを考えている。本年 
  度は現地スタッフの報告や依頼を受け、同様の被害が見られるミャンマーの関係者とも協
  議を行った。今後も現地スタッフとの連絡を更に密にして、助成金事業だけに留まらず事業
  の拡大も検討していきたい。
  現地は16年12月及び17年1月のスマトラ沖大地震等の震源地に非常に近い場所であった
  が、タイ湾に面していたため津波の影響はなかった。
 (3) 河川環境管理財団の河川整備基金助成による「河口・海岸域における生物生息場の機
  能と環境影響に関する調査研究」委員会を5回行った。今年度は「アマモ群落の維持・造成
  に必要な生育環境条件に関する研究」と併せて、農林水産省、国土交通省、環境省の藻 
  場造成事業についてその考え方を比較し、今後の河口・海岸域の生物生息場回復手法に
  ついてのマニュアル作成について討議を行った。これにより、生物生息場の機能と環境影
  響の検討と共に、報告書の作成に着手した。また、これまでに作成してきた報告書を基に 
  指針となる図書の作成を検討した。
 (4) 日本財団の助成による「日本海域に生息するイガイに関する海洋環境研究」を行った。 
  当事業は昨年からの継続事業である。今年度はイガイの国内各地での採取、体内貯蔵物
  質量の分析、呼吸作用による水質浄化機能、能力の調査、分析を行った。2月7日には本
  年度事業の報告、広報を兼ねた研究報告会を行った。

4.国際情報活動
 (1) 海洋科学技術に関する太平洋会議(PACON2004)への参加
   2004年5月30日?6月4日にハワイ・ホノルルにおいて「海洋科学技術に関する太平洋会 
  議(PACON2004)」国際会議が開催された。協会は同会議への論文発表者及び参加者の 
  募集を行い、派遣した。
 (2) 9月1、2日に新潟県・新潟市において「2004新潟海洋国際会議」を開催した。本会議は、
  200海里体制の中でますます沿岸域の資源管理や有効性が必要とされていることから、国
  際会議を開催する新潟県でも取り組んでいる漁場造成、海洋深層水、海洋レクリエーショ 
  ン等に関する研究成果の発表の場を提供すると共に、新潟県だけでなく、アジア太平洋地
  域の各国との意見交換・交流から、国内外へ情報発信することを目的とした。演目には「食
  (農林水産物)」、「ちから(エネルギー・資源)」、「うるおい(観光・交流)」をテーマとした発 
  表・展示を行った。参加者は特別講演、3つのセッション、フォーラム、交流会の延べ人数で
  1,814名の来場があった。
 (3) 第3回伊勢・志摩海洋国際会議の開催準備
   2005年10月27?28日に三重県・伊勢市で開催予定の「第3回伊勢・志摩海洋国際会議」
  の準備として、現地三重県、伊勢市等の関係者との開催に向けての打合せおよび開催日
  程、会場、講演内容、助成金申請等を行った。

5.広報
  機関誌JIMSTEF News Vol.7 No.1?2合併号を刊行し(平成17年1月刊行)、会員、関係者 
  へ配布した。

6.その他
 (1) 韓国海洋研究院の安照道氏が来社し、環境保全に関する意見交換を行った。
 (2) ベトナム科学技術アカデミーのMr. Nguyen Gia Lap氏が来社し、当協会の協力関係を希
  望された。
  (3) 中国山東省青島市において「緑の産業国際博覧会」が開催され、当協会からは鬼頭理 
  事、前田理事、猪口事務局長が出席した。
 (4) 海洋に関連する行事に積極的に参加、協力、援助を行う協会の活動趣旨に沿って、日本
  海洋工学会(下記の9学会の関係者で組織された任意団体)が実施している海洋工学パネ
  ル(2回/年)の事務局を務めた。16年度の海洋工学パネルは、平成16年7月30日と平成 
  17年1月26日に開催した。
      日本海洋工学会加盟学会
       海洋音響学会、海洋調査技術学会、(社)資源・素材学会、石油技術協会、(社)土 
       木学会、日本沿岸域学会、(社)日本建築学会、日本水産工学会、(社)日本船舶海
       洋工学会(17年度より日本造船学会から名称変更)